2024年4月13日土曜日

大道芸パフォーマンス

<蔵出しレポート> 

神戸リパブリック KOBE Re:Public ArtProject (KORPA)より

2023年2月26日                @水道筋商店街、神戸市中央区


出演:to R mansion、江戸川じゅん兵、チャタ、油井ジョージ、吉田望

演出:スカンクスパンク(江戸川じゅん兵×上ノ空はなび)



大道芸パフォーマンス「水の泡サーカス しゅわしゅわツアー」は、日時と場所を変えて6回の上演があり、そのうち2月26日(日)、水道筋商店街から灘中央市場へのルートを辿る回を取材した。神戸の中心地、三宮から阪急電車で二駅、港町神戸の観光スポットとは趣きの異なる、生活圏にある商店街だ。これもまたディープな魅力に溢れた神戸のもう一つの顔といえ、再発見の驚きと魅惑に満ちた体験となった。


出演は世界を股に活躍し、東京オリンピック2020開会式にも出演したtoRmansionを中心とする大道芸のアーティストたち。近年はサーカスやパントマイムなどパフォーミングアーツの周縁的なジャンルにも洗練されたアーティスティックな演技を行うカンパニーが増えてきたが、こちらは敢えて大道芸の奇想天外でコミカルな味わいをもった、庶民の楽しみとしての路上パフォーマンスだ。普段着で行き来する町の人々が子どもも大人もお年寄りも一緒にパフォーマーたちの後について町を練り歩く。日常の中にふいに生まれた祝祭の時間である。


商店街の一角に現れたのは奇抜なメイクとカラフルな衣裳の道化役の男女(丸本すぱじろう、野崎夏世)と、ラート・パフォーマーの女性(吉田望)。ラートとは二本の鉄の輪を平行につないだ器具で、大きな車輪の内側に入ったり上部に乗ったり、アクロバティックな技芸を見せる。路上を回転して進むこともできる。洋品店のショーウィンドーの中ではタキシードを着た首なしのマネキンが動き出し、キャラクターに加わる。こうして開始したパレードには、途中、さらに何人もの大道芸のキャラクターたちが待っていて、歩き進むにつれて次々に出会っていく仕掛けである。3メートルはありそうな背高ノッポの男が現れると人々はその長い脚の下のアーチをくぐり、蝶ネクタイのショーマン(江戸川じゅん兵)のMCもパレードを盛り上げる。その先にはワンマンバンド(油井ジョージ)が待っている。手にギター、背中にドラムス、さらにハーモニカなど何種類もの楽器を身にまとい演奏する姿は、昔ながらのチンドン屋をカントリー調にアレンジした芸風にも見える。


パレードは商店街から灘中央市場へ。アーケードの入り口には「水の泡サーカス」に因んだ風船があしらわれ、ここから一行は人がようやくすれ違って歩けるほどの細い路地に入っていく。屋根のある路地の両脇には八百屋、鮮魚店、精肉店、乾物屋、酒屋、お菓子屋、お惣菜屋から日用品を売る店などがぎっしりと軒を連ね、見て歩くだけで心躍る場所だ。屋根のない一画を小さな広場に見立てた場所で、いよいよ本格的なショーが行われた。ヒッピー風の奇抜な衣裳の男性(チャタ)のリンボーダンス、首無しマネキンから妖精のようなキャラクター(上ノ空はなび)が飛び出すなど、子どもたちをはじめ観衆を沸かせる。ゴム紐を自在に変形させて矢印を作ったり船を表したりする定番の芸も披露。また地元の人とのコラボレーションとして、市場の商店主にしてギタリストの男性が登場、全身黒ずくめのゴシックな風貌でエレキギターをかき鳴らし、大道芸人たちと共演した。この後、さらに市場を進み、路地の奥のロータリー状の広場でショーはクライマックスを迎える。これもまた定番芸のエアーによるカー・チェイスやカラオケなどが場を盛り上げ、向かいの精肉店の店員さんも登場してストリートダンスを披露した。盛りだくさんで見応えたっぷりの大道芸に人々の表情も満足そうだ。MCは灘中央市場が間もなく開設100年の節目を迎える旨を紹介、各店舗での買い物を呼び掛け、市場の益々の発展を祈念しての閉幕となった。