2024年9月20日金曜日

貞松・浜田バレエ団 創作リサイタル36

 

2024年915日(日)

貞松・浜田バレエ団 創作リサイタル36                   @神戸文化ホール


貞松・浜田バレエ団恒例の現代の振付家の作品に取り組む、毎年楽しみな創作リサイタル。今年は以下のトリプル・ビルだった。

 

1演目め、バランシン「ワルプルギスの夜」。聞き馴染みのある音楽と踊りの幸福な関係を味わう。赤紫色のトーンで衣装をそろえた女性ダンサーたちがシンメトリーな群舞の構図を作り秩序ある空間を形成、クラシック音楽との調和による真善美の天上世界が描き出される。バランシンの他の作品にも見られることだが、ここに一人の男性ダンサーが現れることで秩序と安定の構図に変化が起きる。たった一人の異性の登場が澄んだ水に一滴のインクが垂らされたような違和を生み、男女の(異なるジェンダー間の)パドドゥなど、踊りに変化と展開がもたらされる。5列目の平土間席で見たため心配だったが前方にお子様が多く視界は良好(失礼)、バレエのリアルな身体を至近距離で鑑賞した。昨日のデジタル神社の御利益か?

 

2演目め、カィエターノ・ソト『Malasangre』。「悪い血」を意味するタイトルの作品は、往年の女性歌手ラ・ルーペの陰も陽もある濃密な人生に因んでいる。ラテン・ミュージックがアタックで続々とかかる中、腰を落とした構えを基本にキレ、トメ、ハネをたっぷり効かせたエネルギッシュで都会的な振付が手数も多く繰り出される。ダンサーたちはバレエとは異なる動きのロジックを身体の芯で咀嚼し吐き出して旺盛に踊り、ノリの良さが伝わってくる。舞台のソデを上手から下手へ、下手から上手へと横方向に流れる移動の中でデュオ、トリオ、カルテット、あるいは全員が一列になっての動きなど、全体の構成はシンプル。手前と奥で水平の動線が重なるなどの工夫はあるが、そのほかの凝ったフォーメーションは用いない。結果、個々のダンサーのスキルとグルーブが前面に出る。ラテンの楽曲はすべてラ・ルーペ自身が歌っていると思われ、遠い昔に聞き覚えのあるポピュラーな楽曲も含まれている。独特の”はすっぱ”な歌声に波乱にとんだ人生の陰影が滲んでいる。床を覆う黒いちぎった紙片がステップのたびに舞い上がるほかは、舞台装置はなく、黒一色の背景とコントラストの強い照明のみ。衣装も男女とも黒。コテコテの世界観にダークな味わいが滲み、土の香りがする一方で、振付はマチュアで、もの凄く洗練された印象がある。成熟した大人の作品だ。

 

3演目め、アレクサンダー・エクマン『CACTI』。日本初演の本作、今年のパリ・パラリンピックのオープニングセレモニーの演出を担当して注目のエクマン作品とあって、東京からもたくさんの人が見に来ていた。16名のダンサーは彫刻か観葉植物のようなオブジェに見立てられており(タイトル「CACTI」はサボテンの意味)、各人が畳一枚分ほどの台座の上で静止している。冒頭では弦楽器の生音がノイジーな長音を引き伸ばしているが、弦楽四重奏で音楽を奏で始めた途端、オブジェだったダンサー達に一斉に動きが生まれ、ぞくぞくするようなスリリングなパフォーマンスが開始した。台座の上であれこれの動きやポーズを作るダンサーたち。弦楽四重奏の4人も演奏しながらパフォーマンスに加わる。やがて台座をバリケードのように立てたり、全員の台座を建造物のように組み上げたり、大胆な演出により舞台の景色が大きく変化していく。このほかにもダンスの発想を超えたシーンが次々と繰り出され、寸劇調のシーンが入るなど遊び心満載。また意外にも、といっては語弊があるが、音楽との関係にこだわりが見える。共演の弦楽生演奏のほかにも多彩な音楽が用いられ、ダンサーたちが交響曲を指揮する身振りをするなど、背景としての音楽というだけの位置づけではない、パフォーマンスとの直接的な関わり方が独特だ。造形性、演劇性、音楽性を想像力豊かに駆使するユニークな才能に出会った。実にプレイフルな舞台だった。